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アラスカ

 星野道夫の写真展に行った。
 新札幌のDUOに入っている小さなギャラリーだったので星野道夫の写真は全部で10枚程、他の人の写真と合わせても15枚だったがシロクマなどアラスカの動物と自然を撮った写真をじっくり見ていたら意外と時間がかかった。最後の写真を観たとき、星野道夫のプロフィールが出てきて回る順番が逆だったことに気づいた。

 テーブルに彼がなぜクマに襲われたか調べた本も置いてあったので、ちょっと読んでいると係の人がパソコンを持ってきた。前の日にはイベントがありピアノの演奏と同時にスライドショーを流していたらしく、そのときのスライドショーを見せるためにもって来てくれたのだった。
 展示している写真の何倍もの写真があったが、同じ写真でも展示されている大きな写真と画面で見るのとでは全く受ける印象が違った。

 アラスカの動物を見ていて思い出したのは、大学の文化人類学の講義の教科書だ。大学ではよくあるようにその先生が書いたものだったので買わされた。
 カナダ・インディアンのもとでのフィールドワークに基いたこの本を読んで、ぼくはとてもトナカイを食べてみたくなった。彼らの食べるトナカイがものすごく美味しそうなので、ちょっと長くなるがここで引用してみたい。まず、気になるのがトナカイの脂(あぶら)。


 脂肪はトナカイの骨から抽出される。骨を水の中で煮ると、脂肪が浮いてくる。(中略)脂肪はすくい取られ、他の容器に移される。これは室温では白い塊となっている。
 こうしてつくられたトナカイ脂肪は良質で、しかもその味は非常によい。村の店屋から購入してきたラード(豚脂)と比較すると違いは明らかである。ラードには甘味とまろやかさがなく、たくさん食べると腹をこわすことがあるのと対照的に、トナカイ脂は甘くいくらでも食べることが出来る。(中略)トナカイ脂は乾燥燻製肉と一緒に食べたり、また乾燥燻製肉を砕いた粉末と混ぜて食べたりする。
(煎本 2003 p.149)


 甘いというのがとても気になる。そして何となくヘルシーそうだ。
 もちろん脂だけでなく他のちゃんと食べる部分もとても魅力的。煮る料理については、こんなことが書かれている。


調味料は料理の段階では使うことなく、食事のときに各人が適当に塩を付けるだけである。塩以外の調味料は使わない。実際、トナカイ肉はそれぞれの部分が独特の味を持ち、調味料など使用する必要さえないのである。(煎本 2003 p.147)

 必要さえないのである。
 そして、この本ではトナカイ狩りについてとても詳しく書いてある。狩り自体がとても面白く描かれていて、自分もやってみたいとさえ思うが、その獲物をその場で食べるのも絶対おいしいだろうという感じがする。やはり、狩ったトナカイを捌いて食べるのでちょっと生々しくて苦手な人もいるだろうが、最後に長い引用をして終る。
 もしもサンタクロースにプレゼントをもらえるとしたら、そのトナカイがほしいから申し訳ないけど帰りは歩いて帰ってくださいと言いたいところだがこれは野生のものを自分で狩って食べなくては本当の味わいは得られないのだろう。

 狩りの後、わたしたちは森の中で木を切り倒し、雪の上に大きな焚火を起こす。トナカイは解体され、そしてその頭が焚火のところに持ってこられる。トナカイの頭の料理が始まるのである。木の棒の先が鋭く削られ、これがトナカイの鼻の穴の中にまっすぐ突っこまれる。棒の反対の端は雪の中に斜めに深く突き刺され、トナカイの頭がちょうど焚き火の上に来るように固定される。(中略)火にかざす頭の片側が焼けると、それを突き刺す棒を回して反対側も焼かねばならない。頭の表面の毛は真っ黒に焦げてもとのトナカイの頭の面影はない。こうして、半時間ほど火の中で黒焦げにされると、頭は一度雪の上に下ろされる。ナイフで黒く焦げた表面の毛が削り落とされる。それから、口が大きくこじあけられ、下顎がはずされる。
 狩人たちは黒焦げの頭の周りに集まり、ナイフを取り、下顎に付いている肉をそぎ落としてこれを食べる。表面の肉は黒く焦げて強い香りを放つが、狩りの緊張が解けて、空腹なわたしたちには食欲をそそる以外のなにものでもない。下顎の上には二十センチくらいもある舌がついている。しかし、これはトナカイの閉じた口の中にあったためまだ充分には焼けていない。そこで、舌を縦に二つに切り開くと、その舌の付いたまま下顎をふたたび火の中に入れる。しばらくして、火から下顎を取り出すと、舌はもう充分に焼けている。わたしたちは手に手にナイフを持って舌を小さく切り取って口に運ぶ。脂が表面にまで染み出ていて滑らかである。甘くとろけるような味である。下顎に付いている肉も残らずナイフでそぎ落とされ、見る間に下顎は骨とその上に並ぶ歯だけになってしまう。(中略)この骨をナイフの背で叩き割ると、中から骨髄が出て来るのである。骨髄は熱のため小さく縮んでいるが食べるとちょうど焼いた貝柱のように弾力性があり、美味である。こうしてわたしたちは下顎の骨の中まで食べてしまうことになる。
 さて、下顎をはずした残りの頭の部分は上顎と頭蓋から成っている。これは下顎に比べて大きさもずっと大きく、食べがいのある部分である。まず黒くこげた表面の肉を削り取って食べるのは下顎の時と同じである。耳には肉が付いていないので食べることは出来ない。しかし、耳の付け根とその奥につながる筋肉は食べることができる。耳の付け根にはこりこりとした軟骨があり、焼きイカのように歯ごたえがある。また、耳の付け根はトナカイが耳をよく動かすためか発達がよく、肉の多い箇所である。
 トナカイの眼球も食べる。ここはトナカイの肉の中でももっとも美味な部分の一つである。わたしたちは、ここが早く食べたいので人より先に手を出さねばならぬくらいである。(中略)眼球自体はピンポン玉くらいの大きさしかないが、そのまわりを多くの脂肪や筋肉が包んでおり、全体では野球のボールほどの大きさになる。(中略)眼球のまわりについている脂肪は甘く柔らかい。後にキャンプでもトナカイの眼球を煮て食べる機会が多かったが、その甘さゆえに子どもたちにもっとも好まれる部分であった。
 さて、表面の肉を取りおわると、頭部はもう一度火の中に入れられる。頭蓋の内部にある脳によく熱を通すためである。焚き火の上に置かれた頭が焼けるのを待ちながら、このころになるともうわたしたちはけっこう満腹になっている。頭が焚火の中からふたたび取り出されると、わたしたちは上顎の内側に付いている薄い皮膚を骨から剥がして食べる。これはちょうど歯の裏側から口蓋の上にあたる部分で、波のようにうった皮膚は硬く弾力性がある。脳を食べるためには頭蓋を割らなければならない。長い鼻のように突き出した上顎とまるい頭蓋骨との境目あたりを斧で割る。破れた骨の中から白く柔らかそうな脳が湯気を立てて見える。この中にナイフを入れたり、またスプーンですくったりして食べるのである。滑らかで柔らかく、ちょうどアイスクリームのような舌ざわりである。魚の白子のような淡白な味で、眼球と共にトナカイの肉の中でもっともおいしい部分の一つである。わたしたちはこうして焚火で沸かす紅茶を何杯も飲みながら、雪の森の中でトナカイの頭の料理に舌つづみを打つのである。
(煎本 2003 pp.127-130)

 
<引用文献>

『カナダ・インディアンの世界から』煎本 孝 (福音館文庫)
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コメント


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これは…まるで健体解剖ですね!想像がふくらみました。でも、生きるためにしていることだから解剖のような残酷さはなく、たくましさを感じます。かっこいいー!!私も狩りに混ぜてほしい。

頭部は硬いから、大学だと電ノコで切ってます。よくきれるナイフをお持ちなのですね。

azu | URL | 2010年12月08日(Wed)00:36 [EDIT]


>azu
おー、全部読んだんだ。
確かに専門分野だから想像しやすいだろうね。

(中略)の部分は、料理の過程で長い部分を略したんだけど、その中に“焼かれた骨はもろいので、容易に割ることができるのである。”という記述があるのである。
あと、頭の骨はさすがにナイフではなくて境目を狙って斧で叩き割っているのである。
大学でも焼いてから斧で割れば、きっと湯気を立てたおいしそうな脳が現れるのである。でも牛の脳はあまりおいしそうな気がしないある。

| URL | 2010年12月08日(Wed)22:10 [EDIT]


ヘルシンキのレストランで食べたトナカイは、鹿みたいな味だったよ。産地から遠かったし…新鮮ならおいしいかな?

写真展いいね。カリブーの群れを見たい。
とつぜんだけど「狩人と犬」って映画がおすすめ。

み | URL | 2010年12月09日(Thu)12:56 [EDIT]


>み
ヘルシンキで食べたっていいなあ。
鹿も硬くて臭くておいしくないときとすごくおいしいときとあるから、鮮度や処理の仕方もあるだろうね。

カリブーの群れの写真も何枚かあったよ~。ちなみにそれ見て本を思い出したよ。カリブー=トナカイだから。

映画、ちょっと調べてみたよ。面白そうだね!今度見てみるよ。教えてくれてありがとう~

| URL | 2010年12月09日(Thu)23:52 [EDIT]


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