こっそりぶろぐ

こっそり書くが別に秘密にもしない。

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イチイチキュウ

 家を出たのは21時ごろ。道場に行くには遅いが、少し運動するくらいの余裕はある。というわけで軽い運動をかねて、自転車でどこか遠くのコンビニにジャンプの立ち読みに行くことにした。コンビニは特に決めず、とりあえず適当に自転車を走らせて疲れたら立ち読みをして帰るつもりだった。

 そんなわけでカービィのパクリみたいなキャラクターで有名な某TV局の近くを通りかかったときだった。前から歩いてきた女性が突然、壁にもたれかかるようにして崩れ落ちたのは。
 声をかけようか迷ったが下り坂でスピードが出ていたこともあり、それよりも関わるのを面倒に思ったこともあって、横を通り抜けてから2,30m迷いながら走った。ただの酔っ払いかもしれないしちょっと具合が悪くなって座り込んだけどすぐ立ち上がるかもしれない。が、やっぱりあの倒れ方は無視するわけにはいかない、と意を決して停まって振り返ってみた。
 その人はやはりまだ壁にもたれかかって座り込んだままピクリとも動かない。
 ちょうど通りがかった別の人が声をかけようとしている様だった。この期に及んでも知らん振りして通り過ぎようかという考えも少しあったが、坂を登ってそこへ行くことにした。

 仕事帰りらしい、ぼくと同じか少し上くらいの年の女の人が、倒れて目を閉じている女の人の肩を抱いて懸命に声をかけていた。もう一人、初老の外国人男性もそばで様子を見ている。
 様子を聞いてみると、今は寝ているのか目を閉じて返事も無いがはじめは意識は一応あったようで、女の人が声をかけたとき紙を渡されたらしい。
 ぐったりしているがとりあえず息はしているようなのを見て少し安心した。
 そして慌てた様子の女の人に、「この病院に通ってるみたいですけど連絡したほうがいいですかね?」とその紙を渡された。

 その話を聞いて、これは意外と簡単に終るかもしれないと思った。通院している病院が書いてあるってことはやっぱりなんか持病があったのか。もしかしたら薬も持ってるかもしれないし、紙に発作が起きたときの対処法が書いてあるかもしれない。それがあればその通りにして、そうでなくてもその病院に連絡すればいいかな。

 ところが紙の内容はそんなものではなかった。ルーズリーフかノートを破ったような紙には、4,5行に渡って大きめの字でこんな感じのことが書いてあった。
 「ODしました。両親には知らせないでください。お酒もたくさん飲みました。病気も治らないし、云々。
通院先○○××  □□△△(名前)」

 おう!何だこれ。
 とりあえずODって何だろう?でもお酒飲みましたってことは他に何かを飲んだってことで、文脈から言っても本人の様子を見てもまあ薬のたぐいだろう。
 とりあえず通院している病院があるなら119よりはそこに連絡したほうがいいと思ったが、病院名しか書いておらず、電話番号がわからない。
 この病院は精神科、神経科、心療内科などもあるようなので、おそらくその関係で通院しているのだろう。

 ちょうどそこでまた何かつぶやきはじめた、けど英語だと介抱している女の人が困惑していた。

 聞いてみると、蚊の鳴くような声だがものすごく流暢な発音で"Kill me ….Kill me, somebody…."だ。はあ。
 「英語?!」と反応したのは外国人男性。ここから彼が英語で色々質問すると、弱弱しいがちゃんと英語で返事をする。本当にたまたまここに外国の人がいて良かった。ちょっと出来すぎな感じもするが、その人は長く日本に住んでいるのか、日本語も完璧だった。
 ぼくに向かって声を潜めて「殺してくれと言ってます。」と耳打ちしてきた。そのくらいわかるよ。
 それにしてもこの朦朧とした状態で普通にこんな英語で会話するなんてこの人は何者だ。留学でもしてたんだろうか。そばに外国人がいるから英語で話し始めたというわけでもなさそうだ。そこまで周りに気を遣う余裕は絶対ないだろう。
 外国人男性も、この人が最初英語で話し始めたのを聞いてどこの国出身か確認していたが、Japanと言われていた。まあ、紙に書いてある名前も完全に日本人だったし。
 言ってること自体は何を言ってるかわからないような難しいことは言ってなかったし、日本語も絶対わかるはずだが、こっちも英語で話しかけなきゃいけないような雰囲気だったので、あの外国の方がいてくれて助かった。一人だけ大きく年上だったので頼りにもなった。

 そんなとき、スーツ姿のいかにも新入社員という感じのフレッシュな印象の若者が声をかけてきた。そこで状況を説明して、紙に書いてあった病院を知っているか聞いてみたが、知らないという。彼はケータイで連絡先を調べてくれたがちょうど電池が切れそうになったのでぼくがかけた。
 誰も出ない。
 その頃になってようやく倒れている女の人が自分のカバンから病院の診察券を出してきたが、電話番号も間違っていない。診療時間はとっくに終っている。
 家族にも知らせられないし、家の住所は近いが一人暮らしだと言うので送っても意味がない。
 見た目は全く派手ではなく大学生のようにも見えたが、すすきので働いていると言っていたらしい。

 すぐに119番した。
 何かの参考になるかもしれないので、そのとき聞かれたことをまとめておく。
 まず、火事か救急か、次に現場の住所を聞かれる。そして、病人の性別、年齢、状況などを結構詳しく聞かれ、通報者の名前を聞かれた。最後に救急車がもう出たので来るまで付き添っていてほしいと言われて電話が終った。

 救急車が来るまでの間、迷惑をかけたくないから放っておいてくれとか殺してくれとか、英語ですすり泣くような声で言っていたが、興奮している様子ではなかった。あくまで朦朧としていて体には全く力が入らず立ち上がることもできない感じなので、何かしでかすような心配はなかった。
 その間にまた新しく通りがかったおじさんが近寄ってきたが、もう救急車が来るまでやることはなかった。みんなで「もう大丈夫です。」と言ったが、結局その人は救急車が来るまでそばにいて、サイレンが近づいてきたときに、道路に出て腕を振り回すという役割を果たしてくれた。

 倒れていた人は最後にみんなに謝っていたが、それも“I'm really sorry,everyone.”というような調子だったのでみんなどう返事しようか迷っていた。
 「本当にソーリーだと言ってます……ということはわかってますね…。」外国人の人が一度説明しようとして、わからないのは言ってることではなくて対応だという事に途中で気づいて言い直した。

 そしてサイレンの音と共に反対の車線からやって来て、そのまま一般の車とは逆の方向を向いたままこっちの車線に入って停車した救急車を見たとき、やっぱり救急車は無敵だと思った。交通ルール的に。
 到着した救急隊の人に荷物とあの紙を渡すと、その人は担架というよりもベッドのようなもので救急車に運び込まれていった。
 ところがなかなか救急車が発車しないので、見送るつもり待っていたぼくたちも結構微妙な雰囲気になってきて、「もう…大丈夫ですよね…?」と、最後にみんなでお互いにお礼を言い、頭を下げてお疲れ様でしたと解散した。

 結局そのあともあまり運動する気にもなれずその近くのコンビニでジャンプ読んで帰った。

 今回は色々夕張岳を思い出したが、あの時よりも冷静に対処できたことと、とりあえず最後まであの人が生きていたことであのときよりはマシだったと感じた。あの介抱していた女の人と、病院を調べてくれた爽やかな青年の慌てぶりが、ちょうどあの時のぼくやHiguくらいに見え、少し懐かしく思った。
 
 終った直後は結構最善を尽くしたつもりだったが、今考えると水を飲ませたり吐かせたりした方がよかったかもしれない。あとからODを調べたらやはり薬物の過剰摂取(オーバードース)のことらしい。
そうでなくても酒もかなり飲んでいる様子だったので、リセットボタンは押すべきだったかも。路上だけど。
 救急車を呼ぶのももっと早くてよかったかもしれない。とりあえず呼んで、くるまでの間にかかりつけの病院に連絡を取れたらそこに運んでもらうとかでも良かった。まあ、でもそんな変わらないかも。

 それにしても、あれは本気で自殺する気はなかったんじゃないかと思う。少なくともあの倒れているときには。わざわざ紙に通院先が書いてあるし、意識が朦朧としているせいかもしれないけど病院の連絡先を聞いたら素直に診察券を出した。
 本当に死にたい人がそんなことするだろうか。そもそもあの紙はいつ用意したのか。遺書というわけでもなさそうだ。その人が唯一しゃべった日本語は「部屋までは行こうとしたけど…」だ。それ以外は英語。部屋に帰るだけでそんな紙持ってて、一体誰に見せるるつもりだったのか。
 リストカット的なもので、死ぬまでのつもりではなかったように思う。
 まあ病気のせいもあるだろうし、アレは本当に遺書で、もう死ぬのが決まってるから声をかけてきた人に渡したので、本気で死ぬ気満々だったのかもしれない。人の考えてることなんかよくわからん。
 でも、本気でもウソでも死ぬようなことやったら死んでしまう。太宰みたいに。あの様子は危険な状態だったことは間違いないだろう。

 今回で救急車の呼び方を覚えたが、もう二度とこういうことがあってほしくはない。全く知らない人だからまだそこまででもないが、それでも少し気が滅入る。
  
 スキー場で足折るとか雪道で酔っ払って骨折とか、ローソンのトイレで酔っ払って倒れてるとかならいくらでもスノモでも救急車でもパトカーでも呼んでやるけど。自殺とか精神的なものは後味が悪い。
 目の前で倒れたりするのはもちろんだけど、知らないうちにいなくなったりするのもだ。だいたい目の前で倒れるのは見ず知らずの人だ。知ってる人はむしろこっそりやろうとするから始末が悪い。 
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コメント


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へぇ~。世の中いろいろあるもんだねぇ。
実はおれも最近、火事に巻き込まれて相当てんぱったよ。パニックになり過ぎて、かなり意味不明な行動をしてしまったり(笑。
詳細はまた、会ったときのお土産話にしときます。

higu | URL | 2009年09月02日(Wed)00:01 [EDIT]


久しぶり~。
ホントにいろいろあるね。このときは意味わからなすぎて、なんかウソみたいだった。こんなこともあるんだなあって感じだったよ。

火事に巻き込まれたってすごいなあ。それはてんぱるよ。無事でよかったね。
次に会うときに詳しい話を聞くのを楽しみにしているよ~。

だっしゅ | URL | 2009年09月02日(Wed)20:36 [EDIT]


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